戻る

(ゼミ夏期課題レポート)

吉田 恵理子

 私が最近少しだけ関心があるのは、猫の育つ様子だ。
 今、うちの家には仔猫が2匹いる。成猫も2匹いるが、見ていて面白いのはやはり仔猫のほうだ。大人になった猫はあまり感情を表にあらわさない。ただ寝転がって、空腹を感じるとご飯を食べ、また寝転がって、寝転がって…。要するに何の役にも立たない。我々人間は彼らの要求を満たすためだけに存在しているようなもので、多分奴らは我々にあまり興味がないのだと思う。
 それに比べて仔猫たちの行動は、生き物って感情のあるものなんだと思わせてくれる。
 少し段差のある場所から降りる時は、他に降りれるところがないかキョロキョロし、本当におっかなびっくりという様子をしてくれる。相方とじゃれあいの末、喧嘩になったら獣の顔をしてくれる。何をするにも大変わかりやすい表情と行動をとる。
 そんな様子を見た時は、本気でかわいいと思ってしまうが、彼らをかわいいと思うのは、彼らが人間とよく似た行動をするからそう思ってしまうだけで、それはただのエゴだとどっかの本に書いてあった。それを読んで以来、猫にかまう度に猫と人間がわかりあえる日は絶対に来ないと思う。少し寂しいが、まあしょがないかとも思う。
 それにしても動物というのは本当に成長が早い。ついこの間、とても猫だとは思えないくらい気持ちの悪い姿で生まれてきたのに、今はもう毛もふさふさ生えて、触りたくってしまいたくなる風情だ。それにつれて内面も成長しているらしい。親の真似をするくらいお利口になってきたし、人間に媚を売る必要があるときとないときの判断ができるようになってきたようだ。今まで私と一緒に飛んだり跳ねたりしていたのに、最近は私一人で飛び跳ねている。寂しい。というより、馬鹿馬鹿しくなる。私だってもう二十歳なのに、子供のレベルにわざわざ合わせてやっているのに、何で私一人が幼稚な真似をしなければならないのかと思う。きっとこうして猫と人間との溝ができていくのだ。
 猫の成長を見ていて思うのが、彼らの体の細胞はものすごい速さで老いていっているということだ。人間が緩やかに歳をとっていくのに、動物の大半はあっという間に歳をとって死んでいく。この違いはなんなんだろうか。やはり高度な文明を築き上げる程の能力をもった人間という生き物の方が自然界において生き残る資格を得たということなのだろうか。弱肉強食の世界で勝者と敗者が平等に暮らすことはあり得ない。
 私は自分の家で飼っている猫にはもちろん興味はあるが、余所の猫には全く興味がない。よく勘違いしている者がいるが、猫を飼っている人は世の中のどの猫にも興味があると思っている。そんなことは全くない。しかしそう言うと、何て自己中だと非難される。大体猫を飼っているやつほど、自分にしか興味がないものなのに。そのことに気づかない人は大変愚かだと思う。
 私が猫の性質として最も気に入っているのが、見事なまでのマイ・ワールドの構築である。とても羨ましい。あんな風に生きてみたい。

戻る